さいごの夢まで、よろこんで。


私は、自分がこの先ながくないことを知っている。
ながくないって言えば、人によって想像する期間はバラバラだろうけど、本当にちょっとだ。
このまえ病院に行ったときの話では、長くてニ、三年。短くて半年。

こう言われると、もし半年だった場合に、あと二年六ヶ月の未来がある三年は、とても長く感じるに違いない。
だけど今の日本の平均寿命からすると、普通の人間からすれば半年も三年も、あとほんのちょっとであることには変わりないだろう。

もともと、心臓が弱かった。
いつかこうなることはわかっていた。だから余命を宣告されたときも、悲観的になることはなかった。わかっていたから。
ただ私よりも泣き崩れる両親の姿に、出来る限り側にいようと決めた。とんでもない親不孝をしてしまう分、それ以外では親孝行をしようと。

身体が丈夫ではない上に、人見知りが激しかった私は、小学生の頃はあまり友達がいなかった。
おまけに、もともと都会暮らしだった我が家は、私の身体のためにという理由で、小学四年生のときに今住んでいる町に引っ越してきたので、なおさら新しく友達なんて出来なかった。

中学生になる頃に、近くに三人家族が引っ越してきた。同じように、都会から引っ越してきたらしい。そこには、私と同じ年齢の男の子がいた。

中学一年で同じクラスになったその男の子は、同級生からサッカーに誘われても、女の子からデートに誘われても、まったく相手にしなかった。
まわりからはクールだと言われ、どこかミステリアスな雰囲気だと噂されていた。

部活に入っていなかった彼は、同じく帰宅部だった私と家が近いこともあり、帰るタイミングが重なることが多かった。
私が一人で帰っていると、後ろからその子が追い抜かしてくる、という状況が続くうち、自然と一緒に帰るようになった。
< 2 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop