廃想集 『カワセミ啼話』
夕暮れが漆黒の闇に変わる頃、僕らは艶めかしい偽りの海に溺れて息継ぎをするのも忘れるくらいに互いの温度を交換し合って、シナプスの融合に身を任せた。
それだけで、この澱んだ闇を満たすには充分だったから。
結末はいつも、程遠い月の輪郭みたいにおぼろ気で掴めない絶対零度の冷たさを確実に保っていると判っていたから、余計に君の体温は僕の全てを包み込んだ。
僕らは互いに理解し合って、溶け合う術だけを共有しながら、分かち合う喜びに溺れていたかっただけなんだ。
そう、全てが幻のように。
いや、そこに在って忘れられた真昼の月のように。