未熟女でも大人になっていいですか?

ずぶ濡れの手紙

『初めまして、ヤマガタ ミツ様。僕の名前は仙道 保と言います。』


水滴の跡が付いた白い便箋の一行目に書かれてある文章を目で追った。



「知ってるわよ…と言うか、仙道さんて船頭さんじゃなかったのね」


自分で口にしておきながら苦笑する。

差出人の名前を思いきり勘違いしてたんだと、今改めて知った。


「それならそうと、何故もっと早く教えてくれなかったのよ」


お陰で要らない恥をかいたではないか。

その男が一体、何を言ってきたのだろう。


「この無駄な経歴の書かれた手紙は何なのよ?まるでお見合いの添え文みたいじゃない……ん!?」


言葉にした途端、騒めく心臓。


「お見合い?」


誰と?…と、もう一度名前を確かめる。


『仙道 保』


封筒の裏に書かれた文字は、どしゃ降りの雨に晒され滲んでる。

おまけに表の住所はほぼ消えて読めず、辛うじて読めた名前だけを頼りに我が家に届けられた。



『ヤマガタ ミツ 様』


封筒の宛名は、確かに自分のものと同じだと思う。

しかしながら、どうしてあの時の左官工が私に手紙を書いてきたのかが分からない。



「……もしかして、文句を言う為!?」


コートを買い直させたのが気に入らず、文句を言いに寄こしたのだろうか。

そう言えばあの時、パーラーでの会話の中で年齢や住所の話をした。

いつも仕事場の下を歩いて帰っているが、住まいは何処なのですか?と聞かれた。


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