未熟女でも大人になっていいですか?

断る筈が絆されて

手紙を読み返しながらバスに揺られ、指定された喫茶店に到着した。

店はバスを降りて直ぐ目の前にあった。

焼きレンガ造りの壁には蔦がびっしりと絡み付いてて、お洒落と言うよりかはお化け屋敷のような雰囲気が漂ってる。

それでも噂通りの人気店であることには間違いもなく、中や外は人混みでごった返していた。



(あの人、何処にいるのかしら)


ぱっと見、入り口付近を探しても見つからない。

バンビみたいな小心ぶりから察するに、店の中にでも居るのだろうと思い、中へ入った。


店内では芳しいコーヒーの香りに混じって、甘いケーキを焼く匂いが漂っていた。

内壁はモダンな柄の壁紙が貼られ、テーブルセットは全てシックな茶系でまとめられてる。

細長い窓に掛けられた白のカーテンにはフリルがふんだんに使ってあって、細かな透かし模様までが入ってた。


(本当にお洒落なお店だわね……)


感心しながらキョロキョロと見回してると、淡いクリーム色の立て襟ブラウスと焦げ茶色のフレアスカートを身に纏った女店員に声をかけられた。


「いらっしゃいませ。ご案内致しましょうか?」


すらりとした女店員の言葉にドキンと胸を鳴らして背中を反った。


「待ち合わせの相手を探してるんだけど、来てるどうかが分からなくて…」


相手の名前は『仙道』と言うんだと話すと、店員は直ぐに気づいたらしく微笑んだ。


< 183 / 208 >

この作品をシェア

pagetop