未熟女でも大人になっていいですか?
「申し訳ないんだけど、写真を撮るだけなら急いでもらっていい?私にも色々と都合ってものがあるから…」


抉られる傷の根っこは浅くない。

この間は良かったと思えても、実のところは治されてもいない。


完全に忘れるなんて不可能に近い。

だから、私は同窓会を欠席しようと決めたんだ。



「あ…、そうですね。すっかりお邪魔しちゃってすみません」


立石君が恐縮がる。


彼が悪い訳じゃない。

私が子供過ぎるからいけない。


「じゃあ記念に一枚撮らせてもらっていいっすか?」


琴吹君がカメラを取り出す。


「あっ、待って待って!あたしも一緒に写る!」


「僕も一緒に写ろうっと」


「あっ!ズリぃぞ、お前らばっか」


構えようとしていた琴吹君が慌てる。



「いいよ、俺が撮ってやるから皆で写れ」


カメラを取り上げ、高島が構える。

レンズの向きを確かめた後、面倒くさそうに怒鳴った。



「いいかー、一回しかシャッター切らねぇぞ!」


カメラを縦向きにして構え直す。

その言葉に対して私は、どんな顔を見せればいいのだろう。



「カツラ、表情固すぎ!」


そう言われても笑顔なんて作れない。

教師ロボットの私は、今も健在のままだ。


「いつもみたいに笑ってみろよ。そしたら仏さんが喜ぶから」


背後に飾られた仏壇を指差す。

何気なく後ろを眺め、両親の遺影を見やった。


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