イジワル上司に焦らされてます
 



「ホント……私、何やってんだろ……」



完全に扉が閉じてから、私は壁に背を預けて両手で顔を覆った。

一人になった途端に涙が溢れ出して、それを必死に口の中で噛み砕く。

バカみたい。一人で勝手に浮かれて、調子に乗って。

関係が変わった途端に─── 失望させた。



「もう……っ、最悪……」



きっと、今の私は随分酷い顔をしているに違いない。悔しくて、情けなくて……苦しくて。

だけど、これから辰野さんのところへ行くのに泣くわけにはいかない。

泣いたあとの顔でクライアントに会いに行くなんて、それこそ情けなくて救えない。

ゆっくりと、顔を上げた先。

ぼんやりと滲む視界で、エレベーターの回数表示を見つめた。

朝、不破さんと一緒に乗ってきたエレベーターの中。

機械音さえも聞こえない箱の中で、私は一人、震える唇を噛み締めた。

 
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