短編集「見かけ倒し。」

最強。4

みよ「失礼します。」

ボクサー「どうぞ。」

みよ「チャンピオン、おめでとうございます。」

ボクサー「まだ、闘ってないけど?」

みよ「何を言ってるんですか」

ボクサー「はい?」

みよ「34歳のハッピバースデー。」


みよは、ろうそくの付いた、ハッピバースデーケーキを運び入れた。


ボクサー「驚いた。」

みよ「忘れてはいけませんよ。お母さんの苦しんだ日。」

ボクサー「母は、わたしを置いて、小さい頃、出ていきましたよ。」

みよ「お母さんを恨んでらっしゃる?」

ボクサー「考えないようにしてます。」

みよ「そうなんですか。ケーキ食べますか?」

ボクサー「減量中なんです。」

みよ「じゃ、わたし一人で食べよう。」

ボクサー「わたしのじゃないのか。」

みよ「お母様に感謝されてください。」

ボクサー「どうして母が出てくるんだ。」

みよ「条件付きで、感謝するのは、子供のすることです。」

ボクサー「子供だろうが、大人だろうが、ボクサーの世界はね、強いもんの天下です。恋愛においてもね。僕はいやというほど、味わっている。」

みよ「ここのお店のは、生クリームが最高なんですよ」

ボクサー「聞いてねぇな、、失礼、試合なんです。」

みよ「ご武運を。」

ボクサー「何しに来たんだ。」

みよ「ご武運をお祈りしに来たんです。」

ボクサー「余計なお世話なんだよ。」

みよ「気が立ってらっしゃるんですか。」

ボクサー「当然です。僕は、独りです。ここまで生きてきて、まだ独りなんです。ショックだった」

みよ「わたしが居ます。」

ボクサー「あなたは、敵方の妻じゃないか。」

みよ「そうです。」

ボクサー「無理がある。」

みよ「クリスチャンなんです。」

ボクサー「愛も、周囲を見渡して、施すんだな。」

みよ「彼には、たくさんの仲間がいます。けれども、彼自身も孤独を抱えてる。ファイターは、孤独なもんです。だけど、あなたの方が弱い。そして、参っている。だから、わたしはここに居るんです。あなたのために。。」

ボクサー「ずいぶんじゃないか。」


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