好きだけど、近づかないでくださいっ!
「な、何言ってるんですか。俺様も課長も同じ人じゃないですか」

「違うんだろ?お前の中では。違う存在なんだろ?本当に、ムカつくよ」

「ムカつく?私、何かしましたか?確かに避けたり、傷つけたことは謝ります。でも、それはスキサケのせいで・・・」

「なんで、俺が俺に嫉妬しなきゃいけねえんだよ。なんで、腑煮えくり返りそうなくらいイライラしねえといけねえんだよ」

部屋中に泣きそうな課長の声が響く。俺が俺に嫉妬する?

「・・・ムカつく。好きな女に他に好きなやつがいるなんて。しかもそれが自分だなんて。悔しいからこっち向けよ。こないだ言った濃厚なチューしてやるから」

この人は、荒療治過ぎる。
さっきからむちゃくちゃだ。

「・・・嫌です」

もちろん、スキサケが酷く発動しているのもある。だけどそれだけじゃなくて、初めて好きな人に好きだと言われた。

それがこんなにも嬉しいことなんて、思いもよらなかった。

そして、涙が出るくらい幸せなことなんて知らなかった。

「・・・じゃあ今日はこれで許してやる。その代わり、今日から俺と付き合うこと。拒否権はねえからな」

コクンと軽く頷くと、より一層、後ろから抱きしめる腕に力を込められ、そっと唇が私の頬に触れた。

「俺色に染めてやるよ」

くすぐったいせりふと共に。
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