好きだけど、近づかないでくださいっ!
いっそ、今ここで話してしまおうか。実は、椎野課長だけではなく、康介くんにもスキサケが始まったと。

でも、そんなこと言ったら余計に嫌がらせと称した荒療治が酷くなるに決まってる。

そんなの耐えられない。
むしろ、康介くんにはスキサケを気づかれてはいけない。隠さなきゃ。

「おい、聞いてんのか?」

「す、すみません。ぼうっとしてました」

「手、出せ。話聞いてなかった嫌がらせしてやる」

それでも渋って手を出さない私の手を少し苛立った様子で強く掴むとまた、指を絡ませて恋人繋ぎをする、康介くん。

「なんならさっきの、飾りも貸せ」

「危ないですよ、片手運転なんて」

「片手運転には慣れてるから大丈夫だ。ハンドル握るより、お前の手、握っていたい」

この、俺様は。その言葉にスキサケはひどくなるも、なんだか少し頬が緩む。こんなこと今までなかった。

今までは、ただ好きになれば、相手を傷つけようが避けることに夢中になってた。とにかく、相手にこの気持ちを気づかれてはいけない。そればかり。
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