エリート上司と偽りの恋
「まず、こんなふうにメモ用紙に描いた物で申し訳ございません」

頭を下げたあと、もう一度深呼吸をした。


「この絵では伝わらないかと思いますが、私が考えた本体は色はありません、全くの透明です。大きめのキャップはシルバーで、上部にロゴと桜をあしらいました」

みんな黙って私の話を聞いている。この緊張感に私の声は少し震えていたけど、そのまま説明を続けた。


「透明にした理由は、中のチークの量が一目で分かるようにするためというのもありますが、うちの会社のチークの特徴のひとつであるラメが光に反射するととても綺麗なので、それが商品を使わなくても見えたらいいな、と思ったからです。あと、ボトルの色をピンクや赤にしなくても透明ならチークの色自体がその役目を果たしてくれると思いました」


チラッと主任の方を見ると、主任は小さく頷いた。

手も声も震えるけど、あと少し、がんばれ私……。


「そ、そしてキャップなんですが、鏡のようなシルバーにすることで可愛らしさだけではなく大人っぽさも演出できると思いました。シルバーというだけで自分の顔、例えば目元や口元だけとかちょっとチェックしたいなーっていうときに人目を気にせず見ることができます」


会議室はシーンと静まり返っている。

「以上……です」

私が顔を上げたタイミングで、徐々に会議室がざわめき出す。


「すいません」

そう言って手を挙げたのは井上さんだ。

「とてもいい案だとは思いますが、シルバーのキャップとなると指紋とか付きやすく、気になると思います」

思わず謝ってしまいそうになるくらい、キリッとした目が私を見つめている。


「確かに鏡と同じで指紋が付きやすいですが、それらを拭き取ったりしていると自然と愛着が湧いたりしませんか?えっと、私はそうなんです。特に汚れていなくても綺麗にしたくなるというか、汚れを拭き取った後の爽快感といいますか……」


私の言葉に、主任がクスッと笑った。

なんか変なこと言っちゃったかな……。


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