エリート上司と偽りの恋
荷物をリビングに置いて、私たちは二階に上がった。

右側が元私の部屋で、今は物置として使っている。

左側の元結衣の部屋はお客様用として使うときがあるからか、ほとんどなにも置かれていないけど、今日は私たちが寝るための布団が積まれていた。


お父さんが運んだのか、それともお母さんがひとりで運んだのか、そんなことを考えただけで少しウルッとしてしまうのは、私が歳をとった証拠だ。



みんなで晩御飯の準備をして丁度出来上がったころ、タイミングを見計らったかのようにお父さんが帰ってきた。


久しぶりに家族四人で囲む食卓はやっぱりすごく楽しくて、もうすぐ二十九歳になるのに、まるで子供の頃に返ったかのように大声で笑ったりくだらない話で盛り上がった。


ご飯を食べお風呂に入った後、リビングでまた両親と共に仕事の話なんかをした私たちは、二十二時に二階へ上がった。



二組の布団を並べて敷くと、うつ伏せになって枕に顔をうずめる結衣。

「正月に来たのに、なんかすごい久しぶりな気がする。修学旅行みたいでウキウキしちゃう」

足をバタバタと揺らしながら楽しそうに結衣が言った。

私も同じ体制をとり、右側にいる結衣の顔を見ると自然と笑みがこぼれる。


昔と変わらず可愛くて明るい結衣を見ていると、主任の顔ばかり浮かんでしまう。


主任から、もう連絡は来たのかな?もしかして会ったりしたかな?

なんて言われたのか、主任は笑ってたのか、落ち込んでたのか……。


考えれば考えるほど、私の胸は締め付けられた。



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