恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
私にはもう、あの時のあの先輩を描くことしか頭になかった。

満月の光を一心に浴びながら、プラチナ色の被毛を輝かせて空を仰いだ先輩の姿を、私はなにがなんでも描きたかったのだ。

観念して身を起こすと、私はベッドの上でガバッと頭を下げた。

「勝手に描いて、本当にごめんなさい」

「ダメだ」

「ごめんなさいっ!」

もう、最悪だ。

振られた挙げ句に怒らせてしまうなんて。

「あの、すぐに処分します。本当にごめんなさい」

私は急いでベッドから降りると、部屋の隅に置いていたイーゼルへと歩みよろうとした。

「きゃあっ!」

「許してほしいなら」
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