恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》
「い、いだいー」

ニュッと伸びてきた雪野先輩の手に頬をつねられて、私は彼のその手を掴んだ。

「やめふぇー」

「お前、明日から飯当番な。俺の分も作れよ」

私から指を離すと、雪野先輩はお皿を持って立ち上がった。

「あの、明日もカレーライスですけど」

「知ってる。だから俺の分も」

「あ……はい!」

「デカイ声出すんじゃねえよ。チョコレート一つで酔っ払いやがって」

雪野先輩はブツブツ言いながらキッチンから出ていってしまったけど、私は少し嬉しかった。

それからふと旬の事が脳裏をよぎった。

旬……どう思っただろう………雪野先輩が現れたあの時。

胸がズキッとした。

私を見ようともせず、足早に部屋から出ていってしまった旬の後ろ姿を思い出したから。
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