星月夜

 秀星のメアドやLINEのID。知輝に聞けばきっと教えてくれると思う。

 知輝は秀星の親友だし、今、秀星のピアノを専属的にメンテナンスしているのも知輝だ。

 口にはしないけど、高校の頃仲良くしていた秀星と私が今こんな風になってしまっていることに、知輝も何かしら思っているだろう。

 だけど、

 秀星の連絡先教えて。

 その一言は言えなかった。

 言う資格、ないと思った。

 一度、秀星の夢を壊そうとした私なんかが……。



 今夜も月がきれいだ。

 秀星とよく見上げた夜空。

 一人きりのアパート。室内の電気を消して真っ暗にし、レースのカーテン越しに外を見る。

 きれいなものを見ると悲しくなってくる。

 お母さんの指輪。常にはめているそれを月にかざし、つぶやいた。

「お母さんも、昔、お父さんと恋をしたの? どんな恋だった?」

 もっともっと話しておけばよかった。

 会いたい。声を聞きたい。

 過去に戻って、お母さんと、秀星と、もっともっと話がしたい。

 そこに存在しているということを、肌で感じたい。

 思い出や想像だけでは全然満たされない。限界があるんだよ……。


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