初恋、でした。
少女は、流れる涙を拭うこともせず、ただひたすら桜を見あげていた。


僕はなにも言えない。


まるで、この空間自体が息をするのを忘れてしまったかのようだった。


────


少女の真っ赤な唇が、薄くひらく。


音もなく発せられた、言葉。


僕の耳に届くこともなく、風に紛れて消えた。


それが酷く切なく思えて、僕は目を伏せる。


どうしてこんな気持ちになるんだろう。
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