初恋、でした。
考えることを放棄した僕は、なんとなく後ろを振り返る。


ふと、誰かに呼ばれたような気がしたのだ。


それは、本当に〝なんとなく〟だったけれど。


反射的に、と言う方が正しいのかもしれない。


その時僕は世界一、いや、少なくとも僕が生きてきた中で一番強く胸を打たれた。


振り返った先で、僕の目に映ったのは────。


舞い散る無数の花びらと


「っ...」


音もなく、ただ静かに涙を流す、一人の少女だった。


散りゆく薄桃色のなかで、その涙はとても眩しく見えて。


僕は何故だか、目を離すことができない。
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