空の青はどこまでも蒼く
「石田さん、ご存知なんですか?【アプリコットフィズ】のカクテル言葉。」

「知らないわけないじゃない。私が連れて来たのよ、ここに。」

「そうですか。じゃ、次は石田さんが頼んでくださいね。」

「っていうか、【オリンピック】のカクテル言葉は?」

「知らないんですか?」

「知らないから聞いてるんじゃない。」

「そうですか。じゃ、知らなくて良いですよ。」


カクテルで口説いて来て、それはないんじゃないの?って思ったけど、彼にそう言われるとその先は聞けない。

彼の言葉にはそんな力がある。





「私にウォッカ・アイスバーグを、彼にはワインクーラーを。」


そうバーテンダーさんに伝えれば、山野君は頬を緩ませ、左手の親指と一指し指で銃を作って、私に撃つ真似をして来た。

両手を肩の高さで広げ、『まだまだ』、と首を横に振れば、


「覚悟しててくださいね。絶対、振り向かせてみせますから。」


と言われた。
その言葉は私の心に中心に響いた。




お手洗いに立ったついでに、一番初めに頼んでくれたカクテルのカクテル言葉を探す。

あれから、笑い合いながら、色々なカクテルを頼んだ。

山野君から私に【ピンク・スクアーレル】

私から山野君に【カシスソーダ】

私から山野君に【イエロー・パロット】

山野君から私に【シェリー】


飲み過ぎた。

調子に乗って、口当たりの良いカクテルを彼の甘い言葉を摘みに飲み過ぎてしまった。





携帯を開き、≪オリンピック カクテル言葉≫と検索する。


【待ち焦がれた再会】


再会?どういうこと?
私と山野君は再会なの?


お酒の回った私の脳は、そこで思考を停止させた。




< 20 / 67 >

この作品をシェア

pagetop