空の青はどこまでも蒼く
亜美達家族がアメリカへ行くと決まってから、俺は幾度となく母親に聞いた。


「ねぇ!どうして、あみちゃん、あめりか、いっちゃうの?」

その都度返って来るのは同じ返事。


「あみちゃんのね、お父様のお仕事の都合よ。」
「どうして?どうして?」


小さかった俺にはどうしてアメリカに行くのかが理解出来なかった。
俺から亜美が離れて行く。
俺は毎日、毎日泣き続けた。


そんな俺を母親は可哀相に思ったんだろう。
俺にこう言ったんだ。


「将樹、空の青はね、どこまでも蒼いんだよ。将樹が住んでるお空も、アメリカのお空も繋がってるの。あみちゃんがこの世界から居なくなるわけじゃないんだから、いつかは戻って来るのよ。」
それまでの辛抱よ。


幼かった俺には母親のその言葉は衝撃的だった。



空は繋がっている。
この俺の真上に広がる空も、亜美が行ってしまう空も、この蒼さで繋がっている。
俺にとって、母親のこの一言は何物にも代えがたいモノになった。


空を見上げれば、この蒼い空を見上げれば、いつでも亜美と繋がっていられる。
亜美がこっちに帰って来るまで、俺は何年でも何十年でも待ち続けられる。


その時の俺の心は雲一つない蒼空のように澄み渡っていた。
俺はその日から、泣くのを止めた。

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