永すぎた春に終止符を
彼は、私の体に何度も自分の痕跡を刻み、これまで以上に強く記憶に残るように、いくつも目に付くしるしを残していった。
そして、また会いに来るといって帰っていった。
「見た目だけ変えたって、どうにもならないぞ。梨沙は梨沙だ。お前は俺のこと忘れるなんて出来ない」
そう捨て台詞を残して帰っていった。
「拓海のバカ、せっかく忘れようと思ってのに」
こんなことしたら、なんにもならないのに。
誰の為に、忘れようとしてるのよ。
鏡の前に立つと、
彼に伸びた髭で付けられた傷が、いたるところに出来ていた。
彼が、夢中になってつけた赤い筋のような跡…
唇を押し付けられた跡が、いくつも残ってる。
跡を見ただけで、これがどんなふうにつけられたのか、なぞることが出来る。
彼の唇がどんなふうに私の体に押し付けられたのか…彼の唇が触れる感覚ごと思い出して体が疼く…
拓海、忘れさせないって…それじゃダメなのに。
これじゃあ、私の体。誰にも見せられない。