常務の秘密が知りたくて…
｢結婚しても幸せになるとも限らないだろ｣

｢ん？　結婚するのが幸せなんじゃなくて、一緒に幸せになりたい人がいるから結婚するんじゃないんですか？　自分が幸せじゃない人に、誰かを幸せになんて出来ませんよ｣

｢自分の幸せより他人の幸せの方が大事なお前には縁遠い話だな｣

｢大きなお世話です！｣

　すっかりいつもの調子の常務に私は声を荒げる。常務の思い出すことってなんだろうか。どうして私はこんなに常務のことが気になっているのか、ただの好奇心とはまた違うこの気持ちが理解出来ない。

｢にしてもお前は、俺のことどう思っているんだ｣

｢はいっ！？｣

　考えに耽っているところに突然の質問で目を剥いた。

｢色々好き勝手言われているみたいだが、俺は間隔も短いし相手も割り切ってるから、自然とそういう関係になるだけで別に二股かけたりとかそんな真似はしないぞ｣

　すぐになんの話かわからなかったが、どうやら私が常務に関して色々噂を聞いていることへの弁明らしい。そんな改まって言い訳してくれなくても。

｢大丈夫です。もし常務の結婚が決まっても今までの常務の女性関係のことは決して口外しませんから｣

｢お前な｣

　呆れたように項垂れる常務に私は吹き出した。だがその笑いは昨日の光景を思い出して一瞬で消える。

｢だって……親しくしている女性がいらっしゃるのでは？｣

　声が震えるのを抑えるのに必死だった。今、この流れではおかしな質問ではないが、秘書としては完全に行きすぎた内容だ。重たい空気が肌に刺さるような気がした。

｢いねぇよ。なんでそうなる？｣

｢え、デートしていらしたじゃないですか｣

　常務の言葉を追って出てきた言葉に常務が目を丸くする。ここまできたら隠してもしょうがないので私は本屋で見た光景を告げた。
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