常務の秘密が知りたくて…
「ああ。そう言えば」

 何かを思い出したように呟くと常務は机の引き出しを開けてて掌サイズの白い箱を取り出した。透明のビニールに包まれ、細いリボンが幾重にも巻かれている。

「ラッピングはいらないって言ったんだが、お前にだ」

「私に?」

 今までの流れから予想出来なかった展開に、目の前に差し出されたものを私は瞬きをしながら見つめた。

「詳しくは知らないが、手荒れによく効くらしいぞ。そういうのに詳しい知り合いに頼んだんだ。だからその礼に飯を奢った、それだけだ」

 言い訳でもなくつまらなそうに告げられた内容が真実か偽りかなんてわからない。もし本当なら、どうして私にそこまでしてくれるのか、私が

「ほら、有り難く受け取れ」

「なんでそんな上から目線なんですか?」

 思考を遮られて、ビニールの端を持ち上げられて宙ぶらりんになっているハンドクリームに視線を落とす。

「お前が自分で言ったんだろ。俺からのものなら喜んで受けとるって」

 自分の発言を今更ながらに掘り返されて私の頬は熱くなった。

「あ、あれは」

「いいから、おとなしく受け取れ」

 私はおずおずと左手を差し出すと、その上にハンドクリームが置かれた。思ったよりも重い。
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