リーダー・ウォーク

お休みの日。まず朝から予約を入れたエステへ行きお肌を磨く。
お昼を軽く済ませたら次は予約を入れた超人気サロンへ。
どうしますかと言われて「今風で」といったらちょっと笑われた。

おでかけの服はこの前買った可愛いブラウスとスカート。
サロンでお願いしてメイクも直してもらった。

もらったカバンはまだちょっと自信がないので冷蔵庫の上。
デートの時は持参しないといけないけど今は別にいいだろう。

「これを毎回デートの時に出来るかとなると無理があるよね」

建物のガラスに映る自分を見てうっとり、ではなくため息が出た。
お金を払ったらそりゃそれなりに綺麗にはしてもらえるだろうけど。
必要なのはこれくらい自分で出来ないとダメってことだ。

崇央さんに見合うように少しくらいは身なりを良くするべき、かもしれない。
会社見学をしてあまりにも自分が女としてダメな感じがしてそう思った。

身なりを整えてオシャレな雑貨屋やさんとかでなく、つい他のペットショップへ
足を運んでしまうのが自分らしい。

やっぱり気になるのでトリマーさんをじーーーーっと見てしまう。

「私ももっと上手くなりたいな」

やっぱり自分もカット出来る犬と暮らしたほうがいいのかもしれない。
でも親にかってというわけにもいかないしな。自分でも無理だし。
お店を出たら本屋でペット雑誌を2冊購入し柄にもなく途中のカフェでお茶をする。
自分なりに都会のOL風にキメてみた。つもり。

「もうこんな時間か。夕飯どうしよう。面倒だしマックよってこうかな」

雑誌を見ながらお茶して気づいたらもう4時。
サロンとエステとショップ巡りで自由にできる時間はあまり無かった。
夕飯の買い物をして帰ろう。もしかしたら今日あたり彼が来るかもしれないし。
どんなに見た目をよくしても中身はあまり変わってない。

「やっぱり稟だ」
「え?」
「俺だよ。俺。覚えてない?大江だよ」
「……あ。ああ」

スーパーに寄って買い物をして、部屋に向かって歩いていたら呼び止められた。

振り返ったらスーツの男。

見覚えは、ある。

「よかった。忘れるわけないよな、同僚だったんだし。同級生だし」
「……うん。そうだね」
「俺出張でさ。明日には帰るんだけど。お前、上京して何してるんだっけ?」
「トリマー」
「とりまー。ああそうそう。それそれ。へえ、結構羽振りいいじゃん」
「そうでもないけど」
「なあ、よかったらどっか店で飲みながらでも話ししない?1年?2年か。久しぶりだし」
「でも」
「いいだろ?な?行こうって」

相変わらず強引。悪気はないのだが、彼は何時もそう。
このまま引っ張られそうな所で携帯が震える。

『なあ、稟今日は休みだろ?良かったら』
「え?そうなんですか?わかりました行きます。はい。それじゃ」
『え?おい』
「あれ。予定はいった?」
「うん。ちょっと仕事場でトラブルみたい。行かなきゃ。ごめんね」
「そっか。まだ明日の夕方までは居るから連絡くれよ」

相手の言葉に明確な返事はせず適当に返事をして稟はその場から逃げた。
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