リーダー・ウォーク

「さっきは変な電話をしてごめんなさい」
『説明してくれるんだろ』
「するから会える?出来れば静かな場所がいい」
『あんたの部屋行く。チワ丸も連れて行くからちょっと時間かかる』
「わかりました。じゃあ、ついでに何か夕飯お願いします」
『分かった』

どうせ電話にでるまで電話攻めにされて納得するまで質問攻めにされるなら
先に自分から松宮に電話をしたほうがいいだろう。案の定すぐに電話に出て
不機嫌な声で説明を求められた。

稟は先に家に帰って服を着替えてメイクも落としてしまう。
今日はもうそんな浮かれた気分じゃなくなってしまったから。

窓をあけて空気を入れ替えて、散らかっている雑誌をかためて。
チワ丸のトイレと専用ベッドをセッティング。


「美味しそうなお弁当」
「チワ丸の飯はあるだろ?」
「はい。セッティングしてます」
「ん。じゃあ。チワ丸食ってこい」

彼らが部屋に来たのはそれから1時間後。
私服に着替えた松宮と可愛い首輪をつけたチワ丸が部屋に入ってくる。
チワ丸はもう自分のスペースを覚えたようで解き放たれたと同時にご飯へ。

まずは大人しく稟たちも買ってきてもらったお弁当で夕飯をとって。

休憩をはさみ。

「崇央さんが買ってくれたソファ2人で座るとちょっと狭くないですか?」
「それがいいんだろ。こうして肩を抱けるし」

ある日突然家具屋さんから届いたオシャレなソファ。一人だと悠々快適だけど
彼と一緒に座るとキツイ。ぎゅっと肩を寄せあって抱かれると丁度いいらしいが。
慣れてないせいか稟にはまだ違和感がある。もちろんそんな意見聞いてくれないけど。

「崇央さんから電話をもらった時、前の仕事場の同僚が居たんです」
「……女?」
「男。出張で来てるって。田舎なので小中高と同じで。よくしってる相手で」
「もしかして前言ってた幼なじみ?」
「……、…まあ、そうです」
「へえ」

あまり興味の無さそうな返事をした松宮の指が稟の髪を弄ぶ。
それはただじゃれているつもりなのか、あるいは男と聞いて不満の現れなのか。

「あまり長く喋っていたくなかったから、あんな風に仕事場からの電話っぽくして。
すぐ逃げてきたんです」
「何か曰くがあるっぽいな。そいつとあんた」
「……」
「元カレじゃないって言ってたけど。やっぱそういう関係だった?良いよ別に。元なんだし」
「そういうんじゃないですって」
「今は俺のものなんだしさ。そうだろ。な?」
「話し聞いてください」


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