リーダー・ウォーク

「さっきは偉そうにトリマーだなんて言ったけど。
私、これでもまだまだ新人なんです。カットもチェックしてもらって。
だから、あの、実は幾つかサロンを調べたんです。
チワ丸ちゃんに相応しい人気と実力のあるサロン、よかったら」

こんなド新人に指名客がつくなんて本当は凄く嬉しいけれど。
でも、周囲からは常に「気をつけろ」とプレッシャーを受けて。
自分でももし将来的にチワ丸に何かあったらと不安にもなる。

何より、高級志向である松宮が何時迄もペットショップのなんてこと無い

トリミングコーナーなんて利用していていいものかと。

「あんた新人だったんだ。てっきりベテランかと思ってた」
「ごめんなさい。先に言うべきでした。…あ、あの。
サロンの名前とか連絡先をまとめておきましたからこれどうぞ」
「いいよ。今の店で不満はないんだからさ」
「でもこのお店なんてシャンプーの種類豊富でカウンセリングもしてくれるそうですよ?」
「そんなもん、あんただってしてくれる。チワ丸の肌チェックしてくれてるだろ」
「…そ、それは。そうですが」

何かあってはいけないからと念入りにしろと先輩にも言われている。
あと、ただ単純にチワ丸がじゃれてくるので遊んでいるだけ。

「あんたの店でかった犬だ。あんたはなんでも聞けと言った。きちんと面倒みろよ」
「…は、はいっ」
「よし。…あ。いや、別に怒ってないから。そんな怯えた顔しないでくれよ」
「すいません」
「いいよ。俺はあんたを信頼してる。これからもチワ丸を頼みたい。それだけ」
「はい。頑張りますっ」
「面白いお嬢さんだな、あんたは」

クククと笑って出された前菜を食べ始める松宮。
稟もそれに合わせ出されたものを少しずつ食べ始める。
お値段は相当なのに出てくる量が少なくて物足りないけれど、
味は美味しい。と思う。

普段からこんないいモノ食べてないので比べようがない。


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