リーダー・ウォーク

「あんたはそんな事しないだろ」
「わかりませんよ」
「俺への当てつけで交換したとしてもどうせ連絡はしない。向こうから連絡が
来たって面倒だって無視するんだ。あんたは興味のない事には雑になるから。
そうやって時間だけが過ぎてって、自然消滅するのが目に見えてる」

そんなこと無い!と言い返したいけど、返せないほど的確で鋭いお返事。
ランの看板が見えて先客さんたちが楽しげに犬を開放して遊ばせていて。
チワ丸は興味津々なようで嬉しそうにしっぽを振っている。

「……」
「だから余計に、あんたがあの田舎野郎とたまに連絡しあってるのが不愉快でならない」
「え」
「気づいてないと思ってたならそれは人を馬鹿にしすぎだな」
「連絡っていうか。ただ、ちょこっとメール来て返すくらいで。それもたまにで」

面倒だったのでずっとメールアドレスは変えてなくて。
実はあれから彼からメールが来ていた。

その中身は代わり映えしない田舎の事とか、親のこととか1行くらいの些細なものだ。
頻繁でもないし本当にたまに。でも、メールが来るとすぐ返事をする。
相手からもすぐ返事が帰ってくる。でもそれ以上にはならない。当たり前だけど。

「人を軽薄だって言うなら。あんたは何なんだ。彼氏に内緒で連絡を取り合って」
「そんな深い意味は」
「俺も一緒。深い意味なんかないんだ。そこから発展することはないし、どうも思ってない」
「……」
「あんただけは他の連中と少し違うと思ってる。信じたいんだ。裏切られたくない」
「崇央さん」
「あんたは俺を選んでくれたって信じてる」
「……。…うん。チワ丸ちゃん可愛いし」
「おい待てなんでそこでチワ丸?崇央さん愛してる、じゃないの?」
「え?あ。はい。はい。じゃあそういう感じでいいです」
「省略しすぎだろ」

呆れながらも少し笑って、それ以上この話題は出なくなった。
メールを止めろとはっきりとは言われなかったけれど、もうメールは返さない。
知られたら怒られると自覚があったから、
何も後ろめたいことじゃないはずなのに隠していたのだから。

隠すということは悪いことしてるって意識があるってことで。

ここは素直に反省。


「ほら、チワ丸ちゃん。お友達もいっぱいいるよ!遊んでおいで」
「チワ丸。他の犬なんか構うな、格の違いを見せてやれ」
「……パパの言うことは無視でいいからね。のびのび遊んで来てね」

ランに入りチワ丸のリードを外すと怖いのか何度も振り返り中々離れようとしない。
何時も貸し切りで他の犬と接触することがなかったから、勝手がわからないのかも。

「おい稟。あのもこもこした犬チワ丸の尻をかぎにきたぞ」
「ポメちゃんですね。小さくて毛並みもキレイで可愛いなあ」
「あ。毛の長いチワワも来たぞ。メスか。あいつ人気じゃないか。さすがチワ丸」

そこへ先ほど稟がみたラン慣れしていそうな二匹が近づいてきてご挨拶。

「チワ丸ちゃん仲良く走り回ってますね」
「あいつは育ちが良いからな」
「最初は心配だったけど、ちゃんと他のこと仲良く出来るのは崇央さんの教育の賜物ですね」
「俺一人だったら多分、過保護になりすぎて失敗してたと思う」
「家族の理解あっての」
「稟」
「はい」
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