リーダー・ウォーク


「くそ。まさかあの可愛いと思ってたチワワがオスだったなんてっ」
「良いじゃないですかお友達ができて。レオン君」
「チワ丸がその気だったら可哀想だろ!」
「その気だったのは貴方でしょ」

確かにオスっぽくない可愛らしいチワワちゃんだったけれど、名前を聞くまで
メスだと思い込んでどんな子どもが生まれるかまで考えていた飼い主さんは
非常にショックを受けて部屋に戻って来てもソファに座って落ち込んでいる。

まるでナンパした可愛い女の子が実は男でしたと発覚した瞬間みたいな。

「チワ丸……、お前に相応しい美犬が居る。心配するなよ」

チワ丸が専用エステに行くまでにはまだ少し時間がある。
初めての知らない人間がグルーミングをするわけなので飼い主さんは
ギリギリまで落ち着かせて休ませてやるんだといって抱っこしてナデナデ。

「あのポメちゃんは女の子でしたよ?」
「あれは気が強そうだ。チワ丸を尻に敷くかもしれない」
「ポメちゃんは活発な子がおおいですけど。そこまでじゃないんじゃ」
「わからないだろ」
「それじゃ何時までたってもチワ丸ちゃんにガールフレンドできないじゃないですか」

これじゃまた過保護ぶり返してる。
それくらいチワ丸にふさわしい相手に固執しているのだろうけど。

「理想は高く持つべきだ。妥協したらそこで負けだ」
「で。とりあえず可愛かったらOKなんでしょ?」
「何でそんな怖い顔するんだよ」

格好いいこと言っといて。可愛いとか美人とかは確かに一つの基準ではあるけど。
そんな言われたらどっちでもない私は何者なんですかって事になりませんか?
たぶん、そんな事まったく意識してないでしょうけど。

「でも例えここでお友達が出来ても会うのは難しいですよね。やっぱり近場のランとかで
地道に仲良く出来そうなお家のワンコを見つけるしか無いでしょうね」
「地道にねえ」
「大丈夫ですよ。一緒に見つけていきましょう」
「絶対だぞ。俺はそんな人を信頼することなんてないんだからな」
「分かってます」
「あんたが言うなら、ちょっとくらいは。普通のランも……行かなくもない」
「決まりです決まり。チワ丸ちゃんも楽しんでくれてたし。大きい子にも果敢に挨拶に行ってたし」
「あんなクマみたいなのによく近づいていったな。こっちは肝が冷えたぞ」
「崇央さんほんと真っ青な顔してた」
「笑うな」

他の犬と一緒のランも無事に終えて飼い主さんはレベルアップ。
チワ丸もちゃんとマナーよく遊んでいたから大成功と言っていいだろう。

「…後は私か」
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