リーダー・ウォーク


何時もなら何かしら作業をして時間が押すのだが、
チワ丸を預かっている事から6時きっかりに上がる事ができた。

「あ。サービス言うの忘れてた。どうしようチワちゃん」

トリミングサービスにしようと思ったけれど、勝手にやって
後で怒られても意味がない。
キャリーを持ってお店の裏手にある駐車場で待つ。
松宮からさきほどそんな指示がメールで来た。


「よしよし。今月も頑張ったな」

キャリーを渡すと中からチワ丸を抱っこしてチェック。
やはり飼い主は別格のようで稟以上に嬉しそうにしっぽをふり
松宮の顔をペロペロと舐め回しているチワ丸。

「それじゃ」
「まあ待てよ。どうせ予定ないんだろ?」
「夕飯の買い物とか、本屋とか、…色々と」
「乗れよ。そのためにわざわざこの時間にしたんだからさ」
「……はあ」

何の予定もない事を見透かされてムっとするけれど
そんなどうでもいい意地を張っても仕方ない。なにより
上客様の機嫌を損ねてはいけないとオーナーに言われたばかり。
後部座席はチワ丸の席なので稟は助手席に座る。いつもの事。

「実はさ、チワ丸の首輪ができたんだ」
「首輪。買ってなかったんですか?」
「あのラン以外に外を歩かせる気はないからさ。別に急がなかったんだけど
どうせならオーダーメイドがいいだろ?でっかく名前付きでさ」
「でっかく…」
「今から取りに行くんだけど、どうせならあんたと一緒に行こうと思って」
「私にも見せてくれるんですね」
「そりゃな。チワ丸の初めての首輪だからな、……テンション上がりすぎかな」

それはもう、見てるだけでも分かるほどにテンションあがってます。
普段はクールな松宮でもチワ丸のことになるといっきに無邪気になる。
そのギャップが可愛いというか、面白いというか、素敵というか。

「いいと思いますよ。あ。それならカメラ持ってきたら良かった。
携帯で撮らせてください」
「ああ、撮っていい。スキなだけ撮れ」

うん、可愛い。

「ここって雑誌でみたことあります。高級ワンちゃんグッズのお店だ」
「あんたに教えてもらった雑誌を見て知った。で、早速オーダーした」
「なるほど。わあ。キラキラしてる。ペンダントなんてあるんだ。凄い」

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