リーダー・ウォーク

ワンちゃんのドレスから普段着、アクセサリー、首輪、ハーネス、靴。
まるで人間の高級なセレクトショップの佇まいで並ぶのは犬用品。
そんな広い空間ではないけれど、その分濃密な品揃え。
まさにセレブ犬御用達。

つい珍しくて当たりをキョロキョロしてしまう稟。

「その辺ぶつかんなよ」
「は、はい。すいません」

クスクスと笑っている松宮とお店のスタッフさん。
恥ずかしくなっておとなしくチワ丸の首輪を見学。

「どうだ。似合ってるだろ?」
「わあ。可愛い。蝶ネクタイになってる!可愛いっ」
「男前って言ってくれよ。なあ、チワ丸」

フェッティング用にある台にチワ丸を乗せて、今手にしたばかりの
オーダーメイドの首輪をつける。赤いチェックの蝶ネクタイがお洒落。
首輪部分にはきちんと松宮チワ丸の名前がゴールドで記されている。

「素敵!あ。そうだ。写メ写メ…」

チワ丸は何もわからないはずなのに見てくれと言わんばかりに
胸を張ってすわっているから余計可愛い。しっぽは高速でブンブン。
見ている側も付けてもらった側も大興奮。

「大変お似合いです」
「ああ。いい仕事してる」
「ありがとうございます。予備も必要とのことでしたので色違いで準備しております」
「こんな似合うなら3本くらい買えばよかったな」

稟とチワ丸が撮影会をしている間に松宮は会計を終えて店員さんとお話中。

何枚も写真をとって、やっと我に返り「もう大丈夫です…」と恥ずかしげに言ったら
「そりゃよかった」と笑いながら言うものだから店員さんも笑うし、
稟は恥ずかしさでいたたまれなくなって苦笑いでごまかした。

「写真今度焼きますね」
「メールで送ればいいよ。厳選したの1枚」
「1枚は難しいですよ。チワ丸ちゃんすっごいポーズが上手いんだもの」
「そりゃ俺の犬だからな。…じゃあ、適当に何枚かくれ」
「はい」

撮った写真を眺めながら興奮冷めやらぬ稟。
チワ丸は後部座席のキャリーでおねむ。撮影会で疲れたのかもしれない。

「飯さぁ勝手に寿司屋予約したけどいいよな?」
「え?お寿司屋さんって予約いるんですか?」
「要るだろ。席あいてなかったらせっかく行っても手間じゃねえか」
「……もしかして回らないお寿司屋さん?」
「何だよそれ。外人相手のショーでもしてんの?回るって?」
「……ひぇ」

それって、あれですよね。

ネタが時価で生きた心地のしないお店のことですよね?

まじですか。

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