リーダー・ウォーク

チワ丸のお世話係としてお仕事をし始めて1ヶ月経過。

特に何をする訳でもなく、分からないことは教えてあげたり
調べてから報告したり、あとは忙しい時は代わりに一緒に居てあげる。
それだけで稟の生活がかなり余裕が出来るのだから松宮サマサマだ。

ということで。

「お部屋のご希望は」
「職場に近くてあとペット可で」
「では絞り込みますね、少々お待ち下さい」

いきなり決める訳じゃないけど、見学くらいはしてもいいかと
お部屋を探しに仕事終わりにふらっと不動産屋へやってきた。
受付のお姉さんに予算と最低限の希望を言って数分後。

「…2件」
「そうですね。ご提示のご予算ですと。もうあと1万円ほど上げていただければ」
「この資料持って帰っても」
「ええ。どうぞ。よろしければ見学していただけますのでご連絡お待ちしてます」
「ありがとうございます」

選択肢がゼロじゃないだけマシか。世の中そんなに甘くはない。
間取りなどが書かれた紙を2枚受け取りお店を出る。
もう1万円あっぷすれば選択肢は2から5まで増えるそうだけど。
これだって頑張ったほうなのでこれ以上は100円もむり。

やっぱりチワ丸を長時間預かる時はお店に連れて行くしかないか。

部屋でゆっくり過ごすのは難しいみたい。

「やっとプレハブから出る気になったか?」
「松宮様っ」

トボトボと道を歩いていたら目の前にひょっこり顔を出す松宮。
側に彼の車がとまっているから稟を見つけてわざわざとめたのか。
運転席にはこの前の秘書さんだ。

「で。いい部屋あった?それ間取りだろ、見せてみろよ」
「だ。ダメ」
「雇い主の俺のいうことを断るなんていい度胸じゃねえか」
「……だ、だって」

絶対ボロクソ言うに決まってるもの。

「お前の予算を上げてやったんだ。チワ丸を預けるにふさわしい場所なんだろ」
「う」
「……どれ」
「ああっ」

動揺している稟の一瞬の隙をつき手から間取り図を奪う松宮。

10秒ほどじーっと2枚を見比べて。

「あんたはよほどプレハブが好きみたいだな?」
「そ、そんな風にいうから見せたくなかったのにっ」
「言われると分かってるならこんなもん止めろ」
「破らないでください私まだちゃんと見てないのに」

そりゃチワ丸を預かるには粗末かもしれないけど、
今の部屋に比べてみたらかなり広いし綺麗だし何よりペット可。

だがあっさりと紙は松宮に破られた。


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