リーダー・ウォーク

クシャクシャに丸められて彼のポケットに入る。
そこまでしなくていいのに、なんてヒドイ雇い主だ。

「俺の知り合いに不動産扱ってる奴がいる。ソイツに話つけてやろうか」
「松宮様の知り合いとか絶対無理です。日々の家賃支払えません」

何のツテもないから申し出はありがたいけれど、相手が松宮だと。
稟の月の稼ぎを知っているはずなのに。
月10万とか20万とかそんなタワーマンションを紹介されそうで怖い。

絶対無理だ。破産する。

「あんたの経済力も考えずにそんな事を言うわけないだろ?
ま、いいわ。乗れよ、途中まで送ってってやるからさ」
「……すみません」
「何?急に」
「チワ丸ちゃんを預かるのに相応しく無い場所しか私には用意できなくて。
せっかく雇ってもらったのに、でも……私にはこれ以上は」

部屋を探そうと思ったのは自分がかわりたいと思ったのもあるけれど
そこまで急いでいたわけではない。相手もせかしてはこなかった。
店で預かるのでも許容してくれていたくらい。

松宮にいい所を見せようとちょっとだけ無理をしていた。
ですぐにお前はそんな大それた事が出来る人間じゃないとボロが出る。
器用にはできてないのはトリミングの技術だけじゃない。

もっときちんとした生活設計だったらこんな事にはなってなかったろうに。

「そんなに真面目に考えること?別に毎日面倒見てくれとは言ってないだろ。
どんなに広くて設備が整ってる場所でもよく知らん他人なんかにチワ丸は預けない。
信頼してるあんたにしかチワ丸は預けない。ンな気張ってくれなくていい。
その気になったならあんたに見合った部屋を紹介できるように手配してやるってだけ」
「…ありがとうございます」
「ほら。行こう。俺はこれから上の連中と糞面倒な会議に出るんだ」
「ええ!?そ、そうだったんですか!早く行った方が」
「いいよ別に」
「チワ丸ちゃんは?」
「今回は身内だけだから、一緒に連れてく」
「い、いいんですか」
「ああ。いいよ。さ、行こうか」
「……はい」

しょぼんと落ち込む稟をよそに松宮はさっさと車に乗り込み
早くコイと手招きされて慌てて稟も乗り込んだ。

「プレハブ前まで送ってく」
「崇央様。すみません吉野様、崇央様は悪意はないのです」
「…は、はい」

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