リーダー・ウォーク

引っ越しの日も決めてただいま荷造り真っ最中。
スーパーから持ってきた丁度いいサイズの箱2つで足りてしまった。
生活に余裕が出来たので今後はもう少し物を増やせるだろうか。

「身なりにもう少し気を使おう…」

松宮の隣りにいた美女。明らかに稟を見て鼻で笑っていた。
何年経っても垢抜けてない田舎者丸出しておまけに犬臭い女なんて。
本来ならセレブな彼の隣にはああいう派手な美女でないとダメなんだろう。

といっても普段犬のシャンプーやらカットをする間にお化粧なんて取れるし。

香水なんてつけたら犬が嫌がるし。

清潔感だけは保とうと思っているけれど、綺麗に繕うのは難しい。
思い出の品を眺めながらダンボールにつめてぼんやりと過ごす休日。
お昼はスーパーで買った特売カップラーメンで済ませる予定。


「前から思ってたがあんた何ですぐに返事とかしないわけ?携帯見てない?」
「びっくりしたっ」
「携帯止められてるとかじゃないよな?」
「…い、いえ。荷物の整理とかしてて。携帯は何時もマナーモードなので」
「俺待つの大嫌いなの知ってるだろ。ほらさっさと準備して来いよ」
「え。え。え」

お湯を沸かしラーメンに注いでいたらインターフォンが鳴って。
何だろうと覗いてみるとなんと松宮。
慌ててドアを開けたら「居るんじゃねえか」と呆れた顔で言われた。

携帯を確認すると「今からランへ行く付き合え」と短いメール。

最近まったくその手のメールが来なかったからすっかり油断してた。

「俺もチワ丸も飯まだなんだ。ランで食うけどいいだろ」
「は、はい」
「何のために休みを聞いたと思ってんだよ」
「ごめんなさい…部屋が決まって嬉しくて、その。浮かれて」
「へえ。あんたでも浮かれるんだな。見てみたかったその様子」
「やめたほうが良いです…」

ラーメンは諦めて急いで車に乗り込む。身なりに気をつけようといった側から
不意打ちすぎて用意できず何時もの格好。これは仕方ないよね。
待たされて不機嫌そうな松宮だが車が走りだすともうご機嫌そう。
チワ丸とのランはよほど楽しみらしい。その気持ちは分かる。

「最近クソ忙しくてさ、チワ丸も俺が構ってやらなくて寂しかったと思うんだ」
「今日はいっぱい遊んで貰えるねチワ丸ちゃん」
「なあ少し構わなかったら俺を忘れたりするかな?」
「大丈夫ですよ。松宮様と一緒でこんなにうれしそうにしてるんだもの」
「そうか。ならいいんだ」

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