リーダー・ウォーク

最近は何かと忙しくて中々遊んでやれないためにオモチャをたくさん買って
チワ丸の寂しさを紛らわせてやりたいそうだ。少し前までは会社へ連れて行くと
言っていたらしいが、それは稟に言われた後彼なりに考えて止めたらしい。
井上はそう優しい口調で語ってくれた。

「わんわんボール…わんわんキャッチ。…わんわんわんこ」
「井上さんのお家のわんこにもどうですか?」
「そうですね。運動が大好きなので、いいかもしれません」
「それ大型犬の飼い主さんに大人気のオモチャなんですよ」
「…では、これを2つもらおうかな」
「いいなあ。ボルゾイ。生でみたことないんですよね、ボルゾイ…」

ランに行くなら一緒に彼の家にいるこたちも一緒に行ったらいいのに。
でも、大型となるとチワ丸が怯えるだろうか。ブルブル震えて欠伸をして。
そんなことになったら飼い主さんは怒るだろうから、やっぱり無理なのかな。

「では今度トリミングに連れて来ましょう」
「い、いいんですか!?」
「ええ。熊八は大人しくてシャンプーも好きなこですから」
「く、熊八っていう…お名前ですか」
「ええ。熊八。顔が可愛いから」

可愛いから、熊八?え?もしかしたら熊っぽい顔なんだろうか。
いや、全然違うけど。ボルゾイだよね?

「楽しみにしてますね」
「はい。…さて、これくらいで良いでしょうかね」
「ラン用は予備も2つ選びました。あとはお家で遊ぶものと。あまりごちゃごちゃしたのより
シンプルで頑丈そうなほうがいいかなって思ったので。もちろん安全性もチェックしてます」
「分かりました。貴方の選んだものなら崇央様は満足なさるでしょう」
「後で文句言われても知りませんからって付け加えてくださいね」
「あはは。…わかりました」

話をしながらアレコレ選んでカゴにはオモチャがいっぱい。
たくさん与えすぎても良くないと思っていたのに、チワ丸の事を考えていたら
この有様。少ないよりはいいだろうとカゴを秘書に渡して一緒にレジへ。


「何時もご利用ありがとうございます。また来月のトリミングお待ちしてます。
もちろん、ラブちゃんと熊八ちゃんのトリミングも」
「トリミングだけは何があっても崇央様がいらっしゃいますからご安心を」
「え。い、いえ。あの」
「あの方が松宮家の三男として少しずつでも自覚を持ち仕事に打ち込んでくださる
ようになったのはチワ丸と、貴方様の存在が大きいと思っています」
「……」
「崇央様を、どうかよろしくお願いいたします」
「あの。その。私はチワ丸ちゃんの世話係でっ」
「ではまた」

にっこりと笑って去っていく秘書。

そんな事言われると意識してしまうので、やめて欲しいです。
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