リーダー・ウォーク
――松宮崇央。
彼とチワ丸の出会いはほんの1ヶ月ほど前だった。
「なあ、あんた」
「はい」
トリミングルームから出てきた所で呼び止められて。
犬たちが居るカウンターへ向かうとペットショップには場違いなほど
びしっと高そうなスーツ姿の男性。最初、本社の人かと思った。
「こいつ、腹みして寝てるけど。いいの」
「え?…ああ。はい。室内は暖かく設定していますから。
色んな寝相のワンちゃんがいるんですよ。可愛いですよね」
「……あそう。いいんだ」
ちょっと怖い顔でジーっと見ているから怒っているのかと思った。
オーナーからたまにペットショップのやり方を批判する人も居ると聞いた。
そういう人の対応はしたことがないから内心ハラハラ。
でもそれ以降彼から話しかけられず。
だけど。
「あの。よかったら抱っこされます?」
「えっ。で、出来るのか!?」
「はい。抱っこ出来ます。どうぞこちらへ」
10分、20分、30分…何時迄も延々と見つめつづけているので
これはもしかしてと声を書けたらやっぱり気にいなっていたようだ。
彼が見つめ続けていたのはチワワ。
「…ど、どうもてばいい?あってるか?これでいいか?」
「はい。優しく抱っこしてあげてください」
「……よしよし。…お前、…おい…顔を舐めるなばっちいぞ。やめとけ」
「ふふ。可愛いですよね。チワワちゃん」
横から見ていると厳しい表情で強面な印象だったけれど、
椅子に座ってチワワと戯れている顔は優しくて、カッコいい。
不意打ちすぎて、ちょっとときめいてしまった。
「…チワワ。これがチワワか」
「ワンちゃんは今まで?」
「一度もない。……、…なあ、こいつ。俺にかえると思うか」
「チワワは初心者のかたでも飼いやすい犬種にはなっていますが、
出来ないかもと思うのならやめたほうがいいです。
このこは人のように言葉では気持ちを伝えられません。
自分からこのこの気持ちを読み取ってあげる努力が必要ですから」
「……、…読み取る努力。か。そうだな」
「よかったらご検討ください」
あまりマイナスな事を言って客が引いてしまったらまたオーナーに怒られる。
ここはうまく話を終わらせて。
「もらう」
「え」
もう?即決?驚く稟をよそに、子犬を抱き上げて。
「お前の為なら何だってしてやる。一生、大事にしてやる」
それはまるでプロポーズのような言葉だった。
男のこだけど。