リーダー・ウォーク

足が痛い腰が痛い腕がしびれるだるいとにかく疲れた。もうこのまま意識が
遠のいて寝てしまってもいいくらい。時間はまだお昼を過ぎた所でカーテンの
まだ付いてない部屋は日が部屋いっぱいに入りとても明るいけれど。

ダンボールから取り出したひよこ型のクッションを抱きしめて稟はうとうと。

「……あんたは変な所で意地っ張りだな」
「よく言われます」
「俺に電話するの、そんな嫌か?メールでもいいけどさ」
「幾ら偉そうな私でも平日の昼間に荷物運んでくださいなんて電話する神経ないです」
「だったらメール入れてくれたら夕方行ったし」
「お忙しいでしょうから。いいんです、庶民は頑張りました」

後はもうここで生活していけばいいわけで。事故物件でもなんでもいい。

「チワ丸。行け」
「ちょ。ちょっと。…チワ丸ちゃん舐めないでくすぐったい」

松宮に背を向けて寝ていたらチワ丸が開放され稟の顔をぺろぺろ舐める。

「そのまま気を引いてろ」

疲れてもじゃれられるとつい一緒になって遊んでしまう稟。
その間に松宮は立ち上がり勝手にダンボールを覗き込む。

「あははは…チワ丸ちゃんだめだって。……ああ!だ、ダメですって!何勝手に」
「おいソファは?ベッドも入ってねえぞ。机もねえし…お茶飲もうにもカップがねえ」
「……」
「無視すんなよ。家具付きの部屋にすべきだったな」
「……」
「だから無視すんなって。あんたが動けないって言うからヤバイと思って
仕事抜けてきてやったんだぞ?チワ丸も連れてさ…」
「あ。そ、そっか。だ、大丈夫ですから。もう全然だいじょうぶですから!」

つい自分の休みが普通だと思ってしまいがちだけど、そうじゃない。
今日はまだ普通の会社勤務の人はお仕事のある日だ。
だから当然、松宮はスーツ姿。
稟は急いで起き上がる。チワ丸はそれにびっくりして走って逃げた。

「あんたのその見るからにショボそうな体が壊れたら誰が直すんだ?
親は田舎なんだろ。だったら頼れるものはなんでも頼ったらいいじゃねえか。
俺は散々あんたに頼りっぱなしなんだから、たまには頼ってくれよ。な?」
「……松宮様」

何故だろう、すごく嬉しい言葉なのに素直に喜べないのは。

しょぼくてすいませんね。

「で。こういう時は病院だったか?内科?外科?それとも何だ?どうすんだ?」

頼ってもいいんですか?この人。大丈夫なんでしょうか。


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