リーダー・ウォーク

3人とも子どもじゃないんだから。社会人なんだから仲が悪いとか、そんな。
でも、井上の苦労していそうな表情からして日常的に仲は悪そう。

せっかく出てきてすぐ戻るのはチワ丸が可哀想なのでひとまずは散歩をしようと
井上と連れ立って歩き出す。だけど目的地はコインランドリー。

「崇央様も恭次様も根は悪い人ではないのですが…」
「どなたか間を取り持ってくれるような人は?お母様とか」
「奥様は崇央様をお産みになって1年ほどして亡くなりました」
「…そうなんですね」

そして、父親も最近亡くなったと上総が言っていた。
3兄弟しか家族は居ないということか。
だったらなおさら仲良くしたらいいのに、と外から見ていると思う。

「特に上総様は当主になられたばかりですから。会社や松宮家の事、
兄弟のことと大変お辛い立場なのです…」
「お家が名門というのも大変ですね」
「そうですね」
「あ。すいません、コインランドリーいってくるのでチワ丸ちゃんお願いします」
「はい」

洗濯物を出して荷物をすっきりさせてから稟の部屋に冷蔵庫を運ぶ作業へ。
もちろん、肉体労働は人に任せて稟は適当に冷蔵庫を選ぶだけ。
井上は彼女の選んだものを業者に指示を出して運ばせた。

「本当にこんな小さいものでよかったんですか?」
「十分です」
「貴方は欲のない人ですね」
「物欲はないかも。でも、ほかはイッパイありますから」
「ははは」
「お茶していってください。というか、ここでチワ丸ちゃんとお茶しててください。
私、洗濯物とってきます。もうできてる頃だろうから」
「だったら私が」
「いくら秘書さんでも女子のパンツとか無理じゃないですか?」
「……そ、そうですね。チワ丸を見ています」
「お願いします」

ピカピカの冷蔵庫。でもとっても小さい。ちょっと買い込んだらすぐいっぱいになりそう。
そこへ松宮が買ってきたビールを突っ込んで稟はコインランドリーへ。
ビールが冷えてチワ丸も元気にお留守番していたと聞けば彼も大喜びだろう。
井上の気苦労も少しは減ったら良いのに、と思ってみたり。

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