リーダー・ウォーク
そして夕方。
チワ丸と夕飯を何にするか考えながらゴロゴロしていたらインターフォンが鳴り
疲れきった顔をして松宮が入ってくる。すぐさま嬉しそうに足にまとわりつくチワ丸。
座っていた稟もソレに合わせて立ち上がりあれこれと動き始める。
最初は特に気にせずご機嫌にそんなチワ丸を抱っこしていた松宮だったけれど。
「…どういうつもりだ」
突然声のトーンが低くなり、稟を睨みつけるような表情はとってもお怒りで。
「どういうって?」
「それ。何だよ」
「これ?…洗濯物ですけど」
コインランドリーで乾燥機は使わず持ち帰りベランダに干した。
夕方になったからそれを取り込んでいただけなのに。
不機嫌に洗濯物を指差してくるから稟にはさっぱり意味が分からない。
「あんた下着はトランクス?」
「違いますけど」
「じゃあ何?何で男もんの下着がある?誰の?まさか泊めた?」
確かに黒のトランクスが稟の手にはある。
「これは別に」
「別に何だよ。男を部屋に上げたのか?あんた彼氏は居ないって言ったろ?
最近出来た?どうして勝手にそんなもん作るんだ何処の奴だ?店の奴か?」
「彼氏とかじゃなくて」
稟の言葉を無視するように次々と質問を投げつけてくる松宮。
「誰だよここにソイツ呼べよ俺が話しつけてやるから別れろ」
「だから」
「今すぐ別れろ」
「落ち着いて。これは防犯用パンツです」
「防犯?なにそれ」
「私田舎モノだから。都会に出る時に色々と調べてて、男の人が部屋に居るように
見せるのに男性用の下着を一緒に干すと良いって聞いて。それで買ったんです」
「……」
アパートが古く簡単に侵入されそうだったので最初は気にして毎回干していた。
けれど、人間慣れてくると大丈夫だろうと勝手に考えてしまうようで。
いつの間にか干さずにしまったまま行方不明になっていたのを今回の引っ越しで
見つけて、ついでに洗った。
ただそれだけのことなのに、ここまで怒られるとは思わなかった。
というか、今すぐ別れろって酷くないですか?
「仕舞ってもよろしいですか?」
「そんな紛らわしいことするな」
「紛らわしいってなんですか!そもそもなんで怒られるんですか」
「怒るだろ」
「お、怒られても困りますっ」
「ここはオートロックだからそんなちんけな防犯は止めろ」
「何でそんな怒るんですか?チワ丸ちゃんも怖がってるじゃないですか。
私だってびっくりするじゃないですか、そんな怒鳴られたら」
ただ未使用の男性用パンツ干しただけなのに。
ふてくされていると無言で松宮が近づいてきて、稟を睨みつけて。
あまりにも怖い顔をするから一瞬殴られるかと思った。
「……」
「うぐっ」
でも片手で包み込むようにほっぺたをぐっと掴まれてちょっと痛い。
「俺が信じられる女はあんたが初めてなんだ。光栄に思え」
「うぅ…ぐー…」
「稟。なあ。こんな優しい男が身近に居るんだぞ?…もっと俺を欲しがれって」
「も…もう十分貰ってましゅはら…はなにへ」
「離してほしかったら俺にキスしてみろ」
「いやは」
「あ?なに?キスじゃ嫌?ベランダでヤろうって?…変態だなあんた?」
「ひー!するするする!」
これは口説くとかじゃなくてただの恐喝でしょ!