リーダー・ウォーク

最初は大人しくお腹を見つめられていたチワ丸だったがすぐ嫌になったのか
逃げ出して今は自分のベッドの上に気持ちよさそうに寝ている。
ご飯はがっつりと食べてきたみたいだし、ジャーキーもモリモリ食べていたから
今すぐにどうこうということは無い、と説明したにもかかわらず。心配そうな顔。

「何か眠くなってきた。…すいません、先に風呂行きます」
「行って来い」

仕事して仕事場の人と飲み会して松宮と食事してホテル。
明日がお休みで良かった。今日は広いお風呂でふわふわのベッドで眠れる。
あくびをしながら風呂場へ向かい、湯をはるのは面倒なのでシャワーで済ませ。
どうやって準備させたのかは分からないが替えの女性用の下着を身に付ける。

「崇央さんチワ丸ちゃん。お休みなさい」

髪を乾かしお肌の手入れを10秒くらいで終わらせてベッドにごろん。
やはりスイートのベッドは大きくてふわふわで最高。
疲れと酔いとであっという間に眠りについてしまう。

我ながら本当に色気のないスイート初体験だったと思う。


「ああ、ちょっと用事あるから。そっち出るのは10時くらいになると思う。
はあ?別にいいよ、あいつが何を言おうと。やることはきちんとやってんだ、
結果を出せばいいんだからさ。あんたもご苦労さん、ああ。じゃあまた後で」

気持ち良すぎる寝心地に全身が緩みまくっているのが自分でもわかる。
きちんとは覚えてないけどなんとなくいい夢を見たような気もするし。
だけど、耳元で何やら声がして、陽の光が薄っすらとしてきて
ちょっとずつこの夢心地から現実へ引き戻される感覚が名残惜しい。

「……んー…」
「起きたか」

ちょっと目を覚ましてごろんと寝返りをうったら誰かの腕に当たる。
誰かっていうか、そんなのは決まっているのだが。

「……今日は休みだからゆっくりしゅる」
「何だよしゅるって。俺は休みじゃないんだ、時間が来たら仕事に行くからな」
「休めないんですか?」
「休んで欲しいのか」
「無理にとは言わないですけど」
「そうだな。あんたが引き止めてくれるなら休んでもいい。…どう引き止めてくれるんだ」

松宮はそう言うと軽くにこっと笑いこちらの出方を待っている。

「……チワ丸は預かった。無事に返してほしくば今日は休め」
「チワ丸に手を出すな。というかさ、普通に可愛いの想像してた俺に謝れ」
「……、お仕事……のんびりご飯食べてからでもいいでしょ?ね?」
「…で、出来るじゃないか。……不意打ちはやめて欲しい所だが。よし、飯だ飯」
「……ちょろい」
「あ?」
「お腹すいた崇央さん。お腹すいたー」
「待ってろすぐ連絡するから」

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