リーダー・ウォーク

さっそくチワ丸を稟に預け会員登録をしに行く松宮。
とにかくご機嫌。なのはいいけれど。

「チワちゃんだってお友達欲しいよね?」

家だけでなくもっと世界を広げてあげようと言う気はあるみたいだけど、
そこに居るのは飼い主の松宮とお供である稟だけというのはちょっと可哀想。
チワ丸だって他の犬や人と触れ合ってもよさそうなのに。

「可愛い」
「ですよね」

そこに違うスタッフの女性が声をかけてきた。
チワ丸も興味津々でその人の匂いを嗅いで撫でてもらう。
知らない人を怖がったりはしない。

「あ。彼氏さんのワンちゃんでしたか」
「え?…あ。いえ。…あの、……知り合いのワンちゃんで」

厳密にはお客様の大事なお犬様なのですが。
説明し辛い。どうやって言えばいいんだろう。

「どうかした?」
「いえ。受付は終わったみたいですね」
「ああ。会員証ももらってきた。もう少ししたらここを貸しきって走らせてやる」

戻ってきた松宮はまたご機嫌。

こんな時に余計なことを言うのも悪いかな、でも、ちょっとくらいは。

「あ、あの。…あ。そうだ!」
「え?なに?いきなりデカイ声だして」
「お友達のワンコと一緒にどうです?それなら知ってる人だし」
「めんどくせえよ。何で休日まで付き合わなきゃいけない訳?」
「……」

あ、そう。ですか。すいませんでした変なこと言って。

「チワ丸。ケーキ買ってきてやった。美味いらしいからな」
「よかったねチワ丸ちゃん」
「あんたにも。と、言いたい所だけどやめといた」
「いいですよそんな。こんな素敵な場所へ連れて来てもらって」

自分にとっても良い経験になった。
もし、違うお客さんに相談された時に話してあげられるし。

「何食いたい」
「え?」
「昼飯。何でも良いよ、何でも言って」
「……え」
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