リーダー・ウォーク

本当に今さらだけど、順番がおかしい私達。
こんなので恋人同士でいいのかと思うことだらけ。
出会いが犬で、繋がりも犬で。仕事も時間も全然違って

頻繁な連絡も取り合ってなくてそれでも愛し合っていると言えるのだろうか。

「私がいけないんだよね。これって」

相手はそれなりに自分への気持ちを言葉にしてくれていると思う。
告白されてイエスと返事しておいてろくに彼の事を知ろうとしてない自分がいけない。
食事を終えて、先に車で待ってろと言われて鍵だけ渡されて。
松宮が店から出てくるのをぼんやりと車内で待つ稟。

超のつく金持ちさんとの交際なんて、最初はそこまで深刻に考えてなかったのに。

「次回使えるクーポンだってさ」
「良いですね。また来ましょ。ここの豚玉スペシャル美味しかった」
「じゃああんたが預かっといて」

松宮が運転席に座り10パーオフのクーポンを稟に渡すと車は発進する。
後はもう稟を部屋に送り届けてそのまま彼は帰るのだろう。
チワ丸が待っているので部屋でのんびり、とはいかないはずだから。

「あ、あの。…少し静かな所でお話とかって出来たりしませんか」
「話し?なに?今ここでは出来ない感じ?」
「チワ丸ちゃん心配ですよね。じゃあ、このままで」
「そこの駐車場に止めるから。ちょっと待って」

稟の申し出に少し驚いた顔をしつつも車をカラオケ店の駐車場にとめる。
時間帯もあってそれなりに車がとまっていて行き来もあるけれど、
皆さんカラオケ店にしか興味が無いのでこちらは無視。

「私、その。崇央さんのことが知りたいと思って」
「今更かよ」
「……」
「でも、それってつまり。俺のことを知りたいくらいには気になってきたってことか」
「……まあ、そういう感じです」

あとたとえビジネスでも女性の隣に楽しげにいられるとモヤモヤっとします。

「じゃあ手っ取り早く会社来てくれたら色々説明するから。
スーツとか持ってなくてもコッチで用意するし」
「流石に会社にまで行くのは邪魔でしかないでしょう?」
「秘書ってことでなんとかするから。俺もさ、あんたに見て欲しかったんだ」
「怒られない?私はいいですけど、崇央さんが怒られたらもうしわけないし」

松宮家の経営する会社には興味がある。なにせ超のつく高層ビルまるまる私物とか。
仕事場の先輩から色んな話を聞いてイメージだけが立派になっている。

「ああ、いいよ。俺が上の奴と仲悪いの皆知ってるしよく怒鳴ってくるから」
「……」
「やることやってんだから煩く言うなよな。ほんと、頭が固くてウザい」
「そう、ですか?ちょっと怖いかもって思ってたけど。いいお兄さんな気も」
「外面がいいだけなんだろうさ。内面なんてわかりゃしない」
「その点崇央さんは内面も外面も見たようなもんですよね、きっと」
「お。なんだ?ここで俺とキスがしたいって?大胆になったなぁ」
「ゴメンナサイ嘘です」

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