リーダー・ウォーク

稟のシフトの確認をしたら日にちと時間をされてあっという間に見学会の決定。

ちょっとお話出来たらいいかなって思っただけなんですけどね?

分かってたけど彼は思ったら即行動に移す。相手の予定などはお構いなし。
悔しいけれど稟には休みだからってこれといった予定がないので頷くしかなかった。
何時か「その日は予定があるんでむりです」と言ってみたいところだ。

全力で阻止されるんだろうけど。



「ほんと大きいなあぁ…何階建てだろ?まぶしぃ…」

トリマーの面接で使うだろうと実家から持ってきていたスーツ。
就職が決まっても、もしトリマーとして芽が出ず独り立ち出来なかったら
都会で何年かまたOLをするつもりだった。ので捨てられなかったスーツ。

それを着てきっちりメイクをして指示されたオフィスの前に立ったら昔を思い出した。
もちろん会社の規模は比べるまでもない雲泥の差なのだけど。
こうしてビルを見つめている間にも忙しそうに社員さんがたが行き来している

あと、警備員のおじさんが先程から不審者をみるような目でこちらを何度も
チェックしている気がする。早足で中へ入り受付の人に声をかけ、
崇央の名前を出して呼び出してもらう。

「申し訳ございません、松宮はただ今会議中でして…」
「え」
「先ほど始まったばかりでして、お時間もかかるかと」

そんな話聞いてないけど?メールを確認するが日にちも時間もあっている。
予定変更のメールも来ていないし。

これってつまり、帰らないとダメってこと?

「あ。そ。……そうなんですね。わかりました」

予定には無かった緊急の会議かな?それなら仕方ないよね帰ろか。
夜には連絡がつくだろうから何か美味しいものでも奢ってもらおう。

「驚いた。やっぱり稟ちゃんだ」
「あ。上総さん」
「どうしたの?スーツ姿なんて。まあ、ここじゃなんだし僕の部屋へ行こうか」
「え、い、いいんですか?お仕事中だし」
「少しくらいはいいさ。行こう」
「…はい」

予定が乱され少しふてくされていた稟だったが上総に呼び止められ
彼の後ろについていってエレベーターに乗る。

「そんなに面白い?」
「だって皆面白いくらいペコペコしていくから」
「一応この会社のトップではあるから」
「そうですよね。でも、ふふ」

エレベーター前はあんなに並んでたのに社長に譲って誰も乗ってこないし。
廊下を歩いていても道を譲ってかつ頭を低く低く。まるでドラマみたいだ。
そこまでしなくてもいいんじゃないかと部外者な稟は思うのだが。
上総はそんな稟を見てちょっとだけ微笑んだ。

< 96 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop