継恋
「継人今日もいないの?」
キンヤさんは、答えは解っているのだがいつもの様に私に尋ねる。
「はいっ。今日もどっか出かけて行きました!!!」
私の声は、店内のスピーカーから流れるR&Bの歌手の声よりも大きかった。
継人さんと入れ替わる様な形で、毎日仕事が終わってからキンヤさんは、お店に顔を出してくれていた。
「そっかぁ…じゃぁ今夜も二人っきりで楽しんじゃおうよ♪」
一瞬、キンヤさんの顔に心配の色が見えたがいつもの可愛くて優しさいキンヤさんに戻った。
「そうですね。いつもありがとうございます。キンヤさんのおかげでいつも私は癒されます。」
正直な感謝の言葉を送った。
「良いよ。それに俺は恵美花ちゃんの笑顔にいつも癒されてるから。」
そのまま、Loveストーリーでも始まってしまいそうな展開に少しドキドキしていた。
実際、多少慣れて来たとはいえやっぱり一人でお店をまわすのは、何処か不安だった。
そんなに時に、キンヤさんの愛くるしさは、私から不安を取り除いてくれた。
「継人さんにも、キンヤさんの半分でも良いから人を思いやる気持ちがあれば良いのに…」
また、キンヤさんの優しさに甘え自分でも気づかぬ間に愚痴をついてしまった。
多分キンヤさんがこうやって私の愚痴を聞いてくれてるからバイトが続いているんだと思う。
「継人は、恵美花ちゃんに優しくないの?」不思議そうな顔で私の顔を見つめて来た。
「うーん。私継人さんが何考えてるとか全く解らなくて…言葉とか表情は優しいのに何か…」
「ふーん。確かにほぼ毎日一緒に時間を共有してる人が解らなかったら不安な気持ちになるよね。けど継人は優しいよ。」
キンヤさんの言葉からは、長い付き合いの友人を庇う気持ちではなくて彼の素直な気持ちが伝わった。
「そう言えば何でお店空けてるか聞いたの?」
「はいっ…」
私の表情が曇ったのに気づいたのか、優しく「継人は何て言ったの?」
いつもの優しい瞳で私を見つめる。
「女に会ってくるって…しかもとびっきり美人の!って言ってました。」
私がすねた様子でその時の様子を話すと
「ブッハハッハッハ!!!!」
急にお腹を抱えて爆笑し始めた。
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