継恋
宿泊先には、私がワシントン滞在中に使用する、ウッドゲート近くの由緒あるホテルのスイートの一室を使用した。
千尋にとっては、全てが新鮮みたいで、目に写る全てのモノにその大きな瞳を輝かせていた。
「今日は、色々と疲れただろう。明日は早いし、奥に浴室もあるし、シャワーでも浴びてもう休みなさい。」
千尋は、私に勧められるがまま奥のシャワールームへと消えた。
部屋の中央に設置されている大きなソファに吸い寄せらる様に腰を降ろした。
長時間の移動は、慣れていたが今日は何かと疲れた。
重い瞼を閉じ、色んな事を考えていた。
今回の旅をきっかけに、千尋と真尋さんの無くした家族の時間を少しでも取り戻せて貰えると良いのだが、
私達の勝手な判断であまり刺激を与えると多感な年頃の千尋にどんな影響を与えるのだろうか?

???
自分の膝の上に、熱を感じた。
驚き瞼を開けると、照明が消されていた。
私の目が暗闇に慣れた頃、熱の正体が千尋だと気づく。
どうやら、私はいつの間にかソファに座ったまま、眠っていた様だ。
千尋は、幼子の様に私の膝の上にのって、私の事を抱きしめていた。
「何をしているんだい?」
「あまりにも気持ち良さそうにお休みになっていたお父様が愛おしくてつい。」
彼女は、悪戯っ子の様に微笑み、腕を解いて私の横へ座った。
「大人をからかうものじゃないよ。」
「からかう?お父様、お父様の様子を見る限り驚いた様子が見て取れませんわ。だから、からかった事にはならないと思いますけど。

千尋は、変わらず微笑んでいる。
ただ、その微笑みはいつもの可愛らしい微笑みとは異なり、女性特有の妖美な魅力に満ちていた。
千尋は、私の顔をじっと見つめる。
明らかに、いつもと様子が違う。
「お父様、私に何か隠し事をされてませんか?」
思いもよらぬ台詞が千尋の口から漏れた。
私は、動揺を彼女や気取られぬ様にした。
「どうしたんだい急に?」
「誤魔化さないで下さい。」
彼女の私を見つめる大きな瞳から逃れる様に目を背けた。
聡明な千尋が私のとったこの些細な仕草を見逃さなかった。
「お父様?千尋は、貴方が思う程子供ではありません。」
私は、ただ黙りこむしかなかった。
嘘で誤魔化すことも出来たかもしれない。
だけど、彼女のあまりにも真剣な瞳を見ると、弱い私は、嘘をつき続ける自信がなかった。
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