継恋
眩しい光は深い影を産み、溢れるばかりの愛情は尽きることのない憎悪に変わり、運命の出会いも今生の別れへと辿り着く。
私達が生きている世界は、継人が置いた100円玉の硬化と同じだ。
そんな事大半の人間は、私も含め理解出来てるが、私達の目はいつと表側しか見ることができず、目の前の現実のみを受け止めて生きている。
継人の言葉を聞いて、自分の行った罪が軽くなることなんてない。
そんなの充分に解ってるのに心が少し軽くなった。
今直ぐにでも、継人を手放した真実を打ち明けて、懺悔したいが自分の中の理性がそれを押しとどめた。
「世界中には自分の子供をなんとも思わず、望まれずに産まれた子供も沢山いるわ。けど、私はいつもこう思うわ。それでも、やっぱり子供を本当に愛せない親はいない。きっと君のご両親も君の幸せを願ってるわ。」
下手くそな台詞だった。
もっと気の利いた言葉をかけてあげれば良かった。
継人の顔を見るのが少し怖かった。
「ははっ、有難うございます。俺もそう思う様にしますよ。」
不器用な言葉でも、私の気持ちが少しでも届いたのか継人は、少し上機嫌の様子だ。
「私も人の親になった事ないから、上手く言えないけどね。さっ、洗い物済ますから、食器だけ先に下げるわよ。」
少し恥ずかしくなり、場の空気を変えようと立ち上がり、食べ終わった食器を片付け始める。
継人は、ごちそうさまをして、自分の食べた食器をシンクへと下げてリビングへ移動した。
それから、洗い物の間は、仕事の話しを少しして、自分の心の乱れを落ち着かせることに勤める。
「ねぇ、そう言えばさっき会社で私の退社の時間を早める様に勧めてくれたけどどうして?」
「あぁ。いや入社したての時に、感じた違和感の一つに貴方の退社時間もあって、で色々考えた結果、内部でまだ貴方を会長として認められてないんだろうなって思ったし、その不安が異常な退社時間の理由なんだろうなぁって。けど、今後こういった事態になる事はないと思うから、早めの退社を勧めただけですよ。」
本当に、自分の実の子ながら観察力と推察力の鋭さに感心してしまう。
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