継恋
だが直ぐに、男児は、母親を連れて俺の所に戻って来た。
「すいません。うちの子が」
母親は、申し訳なさそうに俺に謝罪して来た。
「違うんですよ。栄養ドリンク買おうとしたら間違ってボタン押してしまって…たまたま隣にこの子がいたから勿体無いし手伝ってもらおうと思いまして。」
右手に持った栄養ドリンクを母親に見せ、笑顔で嘘をついた。
母親は、自販機をチラッと見て、
「すいません。ありがとうございます。」
とまた謝罪をする。
「いえいえ。なぁボウズ手伝ってくれてありがとうなぁ。」
俺は、母親の隣でジュースを美味しそうに飲む男児にお礼を言った。
男児は、ニヤニヤと笑っていた。
「お兄ちゃんにありがとうは。」
と促され、
「あぃあとう。」
とペコリと頭を下げる男児。
母親も男児と一緒に俺に「ありがとうございます。」と頭を下げ船内に、男児を連れて戻った。
今の女性明らかに、俺より若かったよな…
と二十代後半限定の自虐モードに入った。

今まで、幾度となくこんな光景を見てきたが自分自信の親が俺の為に頭を下げる姿を見て育ってない為に、少しうらやましく思えた。
俺もあんな風に子供が出来た時ちゃんと自分の頭を下げれるか少し不安に想う。
「継人は、きっと親バカになるよ。」
頭の片隅で、懐かしい優しい声が聞こえた。
やばっ、幻聴モード入ったかな?
と思い海の先に見えるS市に足を踏み入れるのが少しだけ不安になった。
とりあえず、疲れのせいにしようとさっき買った栄養ドリンクを一気に飲み干す。
船内に戻るとさっきの親子に遭遇しても恥ずかしいし、そのままデッキに残って海を眺めた。
海面に太陽の光が反射してまるで海自体が輝きを発している光景は、神秘的で俺がカメラマンか画家なら作品にしたと想う。
「こんな眩しい海なら溺れてみてもいいかもしれない。」
と馬鹿な事を考えてみたりした。
まっ心配しなくても今すでに溺れかけてるんだけどね…
誰か大きなイルカの浮き輪で助けてくれたら最高なんだけど。
そんな、俺の甘い期待も港に船が着いた瞬間諦めモードに入る。
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