卒業までに、俺を好きになってくれないか
俺が家にいる時間帯に

井澄さんが帰ってくる事がなく

和久井さんの容態が、気になる



「先生 和久井さんは?」


加藤が質問しても


先生は、言わない


それでも、加藤は何度も聞きに行った






夏休みに入る前だった





「意識が戻って、リハビリを始めてる」



先生がやっと、教えてくれた


加藤は、泣いて喜んだ


「和久井は、俺の友人の妹で
小学生の頃から知っている……」


先生は、語り始めた


「アメリカ人の母親に似た、髪と目が
コンプレックスで… 
何度も髪を黒くしようとしたし
カリスマ美容師に染めてもらっても
すぐ元に戻る
そのうち、毛染め液にアレルギーが出て
染められなくなった」


先生は、天井を見る



「とっても内気な子だけど
兄貴といるときだけ、笑っていたよ」



涙をこらえながら



「頼まれたんだ…
普通の学生生活を送らせて欲しい
とっ友達ができて……
皆と……笑って過ごし
グスッ……卒業させて欲しいって」


クラスの皆も泣いていた


「学校を辞めたいと…」


「やだ!!江梨奈と一緒にお花育てて
卒業も一緒にしたい!!」


加藤が、叫んだ



「加藤…ありがとう
夏休み明けに退院出来るから
もう一度、学校に来るように説得する
本人が、どうしても無理だと言ったら
このクラスで、お別れ会をしてあげようと
考えている…どうかな?」


「先生」


「なんだ?」


「和久井さんは、病気じゃないんですよね?」


「そうだ」


「なら、よかった!」



クラス委員長の田端さんが

チャキッと眼鏡を上げた


「夏休み明けは、体育祭ですから
全員参加で、クラス賞を狙いましょう
と、お伝え下さい」


体育係の俺は、ガタッと音を立てて

立ち上がった



「皆で、皆の力で…
和久井さんを引き留めよう!!」


俺の言葉で、皆が拍手で
田端さんに賛成する



先生は、「伝えとく」と微笑んだ




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