カタブツ上司に愛された結果報告書
滅相もございません!
むしろ来て頂けているのが信じられない。


自然と背筋がピンと伸びてしまい、代表から渡されたフルーツの盛り合わせを受け取ると、すかさず田中さんが私の手からそっと取り、テーブルに置いてくれた。


その様子を見て代表は終始ニヤニヤ状態。


「俺は滑川さんに買ってきたわけであって、決してお前に買ってきたつもりはないんだが?」


「もちろん存じ上げております。彼女は病人なので私が代わりに置いたまでです。そもそも代表も分かっていながら、重い物を彼女に渡さないで下さい」


淡々とだけど、どこか怒りを含んだ声で話す田中さんに、代表は「がハハッ」と声を荒げて笑い出す始末。


「田中、急に珈琲が飲みたくなった。一階の売店で買ってきてくれ」

「はい?」


凍てつく笑顔に怯んでしまうも、代表はポケットからお財布を取り出し、田中さんに差し出した。


「ついでに彼女の分とお前の分も買って来ていいぞ」


有無を言わさぬ物言いに、さすがの田中さんも諦めたように大きく肩を落とした。

「かしこまりました」
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