カタブツ上司に愛された結果報告書
「美海……」


愛しそうに初めて呼ばれた名前に、心臓が飛び跳ねてしまう。


余韻に浸る間もなく唇に触れた温もり――。


触れるだけのキスはすぐに離れていき、瞼を開けた瞬間、再び塞がれてしまった。


角度を変え、何度も何度も――。


時折呼ばれる名前に、心底思った。


美海という名前が愛しいと。
彼に呼ばれるたびに、何度も。


キスをするたびに彼の冷たい眼鏡のフレームが当たり、そのたびに思い知らされる。


今、田中さんとキスしちゃっているんだって。



それから観覧車が地上に辿り着くまで時間を惜しむように、何度も田中さんは私にキスを落とした。

頭の芯が蕩けてしまいそうなほどのキスを――。
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