私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~
軽くその辺を走ったあと、彰人は家まで送ってくれた。
助手席側の窓を下げ、こちらを見、
「おやすみ」
と言う。
「お……おやすみなさい」
お試しに付き合うって言ったけど、やってることは、普通の恋人同士と変わらないな、と思い、ちょっと気恥ずかしくなる。
彰人の『おやすみ』は、今まで誰の口から聞いたそれよりも、やさしい響きを持っていた。
家に入ったのは、千鶴が勝手にクッキーを食べようとしている、まさにその瞬間だった。
思わず、叫ぶ。
「あーっ。
お姉ちゃん、勝手にクッキー食べないでーっ」
「なによ。
彼氏にもらったクッキーだからって。
あんたに昔、菅野がくれたキャンディあげたじゃない」
と言いながらも、千鶴はなにやら機嫌がいい。
どうしたんだろうな。
攻撃的なのも困るが、妙にやさしいのも怖いんだが、と思いながら、
「じゃあ、一緒に食べようよ」
と千鶴にその箱を差し出す。