部長っ!話を聞いてください!
予想が的中し、また呻き声を上げてしまった。
姉だ! 最悪だ!
「部長、違うんです。それ本当に違うんです。ちがうんですっ!!」
部長の腕に縋り付くと、「土屋」と優しく名前を呼ばれた。
「俺に聞かれていたことが、恥ずかしいのは分かる。けど、少し落ち着け。肩の力を抜け。深呼吸しろ」
私は何が何だか分からないまま、言われた通りに、深呼吸し、力を抜いた――……その瞬間、私の手の中からするりと部長の腕が離れて行った。
「……じゃあ」
そして、あっという間に、大きな背中が遠ざかっていった。
「部長ーーーーっ!!」
絶叫し、私は走りだす。
行かないで、部長ーーーー!
同じく走りだし、猛スピードで遠ざかっていく部長に向かって、私は懸命に手を伸ばした。