部長っ!話を聞いてください!

思わず、息が止まった。

すぐ目の前には、部長の顔。

部長の瞳から目がそらせない。

鼓動がうるさくなっていく。


「……部長っ」


緊張したまま声を発すると、部長が私の唇の前にそっと人差し指をかざした。


「静かに」


部長の指が、唇を掠めた。

微かに触れた感触に、トクリと、鼓動が跳ねあがる。


「分かったか?」


とにかく今は誤解を解きたいのに……話をしたいのに……気が付けば私は、こくりと頷き返していた。

部長は薄く笑みを浮かべ、私の腰から手を離し、そのまま支柱を掴んだ。

顔が熱い。体も熱い。周りの視線が恥ずかしさを膨らませていく。

居心地の悪さを感じながら、ちらりと部長に目を向ける。

ぱちりと目が合い、話しかけようとすると、部長が今度は自分の唇の前に人差し指をかざした。


『静かに』


数秒前にかけられた言葉が頭の中によみがえり、私はいったん口を閉じた。

普段そんなに声が大きい方ではないけれど、確かに部長と話すときは別かもしれない。

緊張と気恥ずかしさでテンションが上がり、微妙に声が高くなるときもある。


周りが迷惑と感じないくらいの“小声”を心がけて話せば、大丈夫かな。



< 43 / 74 >

この作品をシェア

pagetop